日本透析療法学会雑誌
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慢性血液透析療法中に感染性心内膜炎による心不全を呈し大動脈弁置換術, 僧帽弁形成術およびCAPD療法が奏効した1症例
椿原 美治倭 英司横山 建二万代 尚史岡田 倫之中西 功飯田 喜俊秦 石賢大西 健二小林 芳夫
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1987 年 20 巻 8 号 p. 597-601

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抄録

約4年の慢性血液透析歴を有する49歳の男性がvascular access infectionによると思われる感染性心内膜炎を合併した. 血液培養にてStreptococcus faecalisが検出された. 抗生剤にて炎症所見は改善したが, 大動脈弁および僧帽弁閉鎖不全により心不全が出現し血液透析による管理が困難となった. そこでCAPDを導入し術前管理を行い, 大動脈弁置換術および僧帽弁形成術を施行した. 術中, 人工心肺回路に重曹透析を併用した. 体外循環時間が2時間28分と長く, 大量の輸血を要したにもかかわらず, 極めて安定した水, 電解質バランスが保持された. 術直後も心不全の管理の目的でCAPDを継続した. さらにvascular access infectionによる置換弁への再感染の予防も考慮して社会復帰に際してもCAPDを採用した. 退院後現在に至る2年10ヵ月間術前にも勝る社会復帰状況にある.
本症例の経験より透析患者におけるvascular access infectionの危険性に関し文献的考案を加え, 開心術前後の管理におけるCAPDの有用性, 人工心肺回路と重曹透析の併用の有用性について考察した.

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