抄録
副甲状腺全摘術と (PTX) 副甲状腺自家移植術を慢性血液透析を行っている10例 (男性5, 女性5) に施行した. 年齢は34-54歳 (平均45歳), 透析歴は18-146ヵ月 (平均108ヵ月) であった。 全例に骨痛を認め, 掻痒感を4例, 踵骨骨折, 肋骨骨折とアキレス腱断裂を各1例, バチ状指を4例に認めた。 骨X線では頭蓋骨のsalt and pepper appearanceと指骨の骨膜下吸収像を全例に認めた. 生化学の平均値は総カルシウム (Ca) 5.1mEq/l, 燐 (P) 4.8mg/dl, アルカリフォスファターゼ (ALP) 53.0KA単位, C末端副甲状腺ホルモン (PTH) 38.3ng/mlであった. 201TICIと99mTcO4-による副甲状腺のscintigraphyと頸部CTにより副甲状腺を確認した. Wellsの方法に準じて副甲状腺の全摘術と自家移植術を施行した.
9例に全摘術を施行し1例は1腺のみ摘出できた. 摘出重量は787-8,100mg/患者 (平均3,819mg/患者) で組織は9例が主細胞の過形成で1例はoxyphil cell hyperplasiaを伴っていた. ScintigraphyまたはCTにて, 摘出重量500mg以上の25腺中22腺 (88%) が術前描出が可能であった. 術前のC末端PTHは摘出した副甲状腺重量と有意の正の相関を認めた (r=0.706, p<0.05). 手術により掻痒感, 骨痛, 骨折および腱断裂は全例改善を認めたがバチ状指は改善しなかった. 術後3.0mg/dl以下の低P血症を9例に認めたが補充療法は不要であった. ALPは術後2週間まで上昇傾向を示したが, 以後次第に低下し4ヵ月後より正常化した. C末端PTHは術直後より著明に低下し再上昇を認めなかった. 骨X線ではsalt and pepper appearanceの改善を8例に, 指骨の骨膜下吸収像の改善を9例に認めた. 2例にPTHの再上昇を伴わない骨痛の再発を認めた.
二次性副甲状腺機能亢進症に対する副甲状腺の全摘術と自家移植術は有効であると考える. しかし, 骨痛の再発を2例に認めたことより適応を含め今後更に検討する必要がある.