日本透析療法学会雑誌
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糖尿病性腎不全の臨床像と栄養療法の評価
渡辺 有三湯沢 由紀夫吉田 太関山 聡史尾崎 郁夫深津 敦司松尾 清一坂本 信夫伊藤 晃山崎 親雄
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1988 年 21 巻 3 号 p. 333-340

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抄録
糖尿病腎不全患者の保存期での腎機能低下に対する食事療法の効果, 導入期での糖尿病状態の変動などについて, 136例の糖尿病性腎症による透析患者を対象として検討した. 保存期療法の検討は, 6ヵ月以上の保存療法が可能な57例を対象とした. 腎機能の悪化率はMitchらの報告によるΔ1/Crの回帰直線により算定した. 基本的な, 保存期の食事療法はエネルギー1,600Cal, 蛋白質50gであり, 透析導入後は一律に1,800Cal, 70gに変更されている. その結果, 1) 糖尿病性腎症による者の勾配 (腎機能低下速度) は0.0190, 慢性腎炎患者群は0.0097で, 糖尿病性腎症群では明らかに進行が速い. しかしながら, 糖尿病群でも勾配が患者により様々である. 2) 糖尿病群を保存期間中の平均尿蛋白量にて, 2g以下, 2-5g, 5-10g, 10g以上の4群に分けて検討すると, 尿蛋白の多い群ほど有意に勾配が急峻であった. 3) 尿蛋白の少ない群の特徴は, 高年齢者, 治療経過中にインスリン療法が不要な者, 眼底所見で糖尿病性変化が軽度な者等であり, 腎硬化症がその変化の主体を占めると考えられた. 4) 糖尿病性腎症はheterogeneityに富んだものであるが, 蛋白摂取制限は腎機能悪化の予防に有用であった. しかしながら, 尿蛋白量を摂取蛋白質に上乗せする食事療法は危険である. 5) 導入時, 糖尿病群は明らかに早期に透析に導入されており, かつまた容量負荷の傾向であった. 6) 透析導入より導入後1ヵ月での指標の変化で, 溢水が顕著だった者では, 溢水の改善とともに, 血糖の増加, インスリン投与量の増加が顕著に認められた. 温水が糖尿病の見かけ上の改善 (amelioration) の一因と考えられる結果であった.
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© 社団法人 日本透析医学会
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