抄録
短時間作用性透析用抗凝固薬として最近臨床応用の試みられているタンパク分解酵素阻害薬の抗凝固作用を的確に反映する凝固時間測定法を明らかにする目的で, nafamostat mesilate (FUT-175: FUT), gabexate mesilate (GM), ヘパリンの抗凝固作用を各種の凝固時間測定法を用いin vitro, 臨床試験で検討した. in vitro試験では, 活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT), 全血APTT (WBAPTT), 血漿カルシウム再加時間 (PRT), 全血RT (WBRT) 全血凝固時間 (LWCT), セライト活性化CT (CCT), エラジン酸活性化CTはヘパリン, FUT使用時とも濃度依存性に延長するのに対し, カオリン活性化CT (KCT) はヘパリンでは延長するもののFUTでは高濃度に至るまで延長を認めなかった. KCTとLWCTの相関をみると, ヘパリン, FUTとも両者は有意に相関するものの回帰直線の傾きは各々0.08, 0.003と後者は前者に比し極めて小さく, KCTはFUTによる凝固時間の延長を的確に反映できないと考えられた. 一方, CCTとLWCTはFUT, ヘパリン, GM使用時とも有意に相関し, 回帰直線の傾きは各々0.46, 0.29, 0.63とCCTは各薬剤の抗凝固作用を鋭敏に反映することができた. FUTを用いた臨床試験時にもKCTはほとんど延長しないのに対し, 他の凝固時間測定法ではFUT注入部位直後の血液に著明な延長を認めた. GMを用いた透析時にもCCTは延長するのに対し, KCTの延長は極く軽度であった. カオリン, セライトとFUT, GMを混和し, FUT, GMの濃度を測定すると, カオリンでは濃度依存性にFUT, GM濃度が低下するのに対し, セライトでは変化は見られなかった. 以上の成績より, FUT, GMによる抗凝固作用をKCTは的確に反映し得ず, その機序としてカオリンによるこれら薬剤の吸着が推定された. 一方, CCTはFUT, GM, ヘパリンの抗凝固作用を的確に反映し, 測定の簡便性からも, 最も適した凝固時間測定法と考えられる.