抄録
慢性透析患者120例について, 免疫能を左右する因子に関して年数別に検討を加えたところ, 次のような結論を得ることができた. すなわち, 末梢血白血球数, 単球数, リンパ球数は透析年数と共に減少傾向を示した. リンパ球サブセットでは, 特に5年以上の透析歴を持つ患者ではhelper T-cellを認識するOKT4の減少とsupressor T-cellを認識するOKT8の増加傾向があり, OKT4,8比は低下傾向にあった. 一方, 細胞性免疫能の指標となるSU-PS皮膚反応は, 透析年数と共に低下傾向を示した. 他のマーカーとして, 血清IAP値は透析導入直前の患者では高値を示したものの, 透析導入後に有意に低下した. しかし透析年数と共に再び増加傾向を示した. また血清CEA値は透析年数別には一定の傾向を示さず, 正常値を示したものが多かった. ところが, 10年以上の長期透析歴を持つ症例では約半数が異常値を示し, 最高11.6ng/mlと高値を示した症例が原発性肝癌により死亡した.
以上の如く10年以上の透析歴を持つような症例では, 免疫能が低下しており, これに基づく悪性腫瘍, 結核の再燃などに注意を払わなければならないと考えられた.