抄録
1回透析の除水量 (UF) が慢性血液透析 (HD) 患者の左室肥大 (LVH) 進展の要因になりうるか否かについてretrospectiveに検討した. 透析導入後1年以内 (平均6ヵ月) に心エコーを施行し, 以後2年間にわたり左室壁厚と左室心筋重量 (LVM) の変化を観察しえたHD患者29例を対象に, UFにより1kg未満 (group 1, n=10), 1kg以上2kg未満 (group 2, n=13), 2kg以上 (group 3, n=6) の3群に分類し, 各群での左室形態の変化を比較した. 透析時間は全例1回5時間で, 週3回透析を施行し, 観察期間中透析方法の変更はなかった. 心エコーは透析前に施行し, Mモード心エコー図から心室中隔厚, 左室後壁厚, 左室拡張末期径, 左室収縮末期径, LVM, Fractional shortening (FS) を測定した. なお, LVHに影響する因子として平均血圧, Htを測定するとともに, 体重管理の状況を評価するためdry weightの経過も観察した.
その結果, LVMはgroup 1ではcontrol (C) 期 (212±66g), 1年目 (216±79g), 2年目 (205±102g) と経過中不変であり, group 2ではC期 (202±62g), 1年目 (224±84g), 2年目 (234±103g) とC期に比し1年目に有意の増加 (p<0.05) を, group 3ではC期 (194±37g), 1年目 (254±55g), 2年目 (283±60g) と経年的に有意の増加 (p<0.05) を認めた. 一方, dry weightはgroup 1では経年的に, group 2では2年目のみ減少が認められたが, group 3では経過中不変であった. なお, 平均血圧, Htは各群とも有意の差は認められず, また経過中いずれも不変であった. 左室収縮能はgroup 2, group 3においてLVHの進展にもかかわらず, 正常範囲に保たれていた.
以上の結果から, UFはHD患者においてLVH進展の要因となりうることが示唆された. また, 1kg未満にUFを保つことがその予防に重要であると考えられた.