抄録
目的: 長期透析の認知機能に及ぼす影響を, 事象関連電位の一つである大脳誘発電位後期陽性成分, すなわちP300を用いて検討した.
対象: 長期透析患者10例, うち男3例, 女7例で, 年齢は30-55歳 (平均44.1±8.1歳), 透析歴は9-15年 (平均10.7±1.8年). 対照として健常者30例, うち男14例, 女16例. 年齢は22-105歳 (平均47.9±19.0歳).
方法: 誘発脳波計として米国ニコレ社のコンパクト4を使用し, 聴覚刺激によるオドボール課題を用いた. 刺激として両耳同時に呈示間隔0.7秒で低頻度刺激音2000Hz (20%) および高頻度刺激音1000Hz (80%) 2種類のtone burstをat randomに計200回呈示した. 記録は国際10-20法の前頭中央部Fz, 中心中央部Cz, 頭頂中央部Pzに活性電極を, 連結した両耳朶に基準電極を置いて行なった. 同時にアーチファクトをチェックするため眼振図 (EOG) も記録した. 増幅器の周波数帯域は1-30Hzで, 分析時間は刺激前100msecから刺激後600msecとした. 再現性をみるため検査は2回施行した. P300は刺激後250-500msecの間に最大陽性頂点をもつ誘発電位とし, その頂点潜時を測定し, 2回の検査値の中で, より短い値を採用した.
結果: 健常者においてP300頂点潜時はFz, Cz, Pzのいずれでも加齢と共に有意に延長した (Fz: y=2.23x+224.4, r=0.804, p<0.01, Cz: y=2.07x+223.6, r=0.792, p<0.01, Pz: y=1.97x+237.4, r=0.745, p<0.01, y: P300, x: age). 透析患者10例全例でP300頂点潜時は健常者のそれに比し有意な差はみられなかった.
結語: 1) 透析患者のP300頂点潜時は健常者のそれに比し有意な差はみられなかった. 2) 9年以上の透析でも, P300で示される認知機能に影響を及ぼさないと考えられた.