抄録
血液透析をうけている慢性腎不全患者の血漿エリスロポイエチン (EPO) 濃度を測定し, 正常対照群と比較するとともに, 様々な因子との関係を検討した. 対象は3ヵ月以上血液透析を受けている慢性腎不全患者67例と, 正常対照者16例で, 測定は人精製EPOを家兎に免疫して得られた抗EPO抗体を用いたラジオイムノアッセイ法により行なった.
正常対照群の血漿EPO濃度は7.7-20.4mU/mlであり, 平均13.3±0.4mU/ml (mean±SEM) であったのに対し, 血液透析群の血漿EPO濃度は5.0-176mU/mlで, 平均19.4±3.0mU/ml (mean±SEM) と正常対照群に比較して有意に高値を示した (p<0.05). 血液透析群の年齢, 性, 末梢血ヘマクトリット値, ヘモグロビン濃度と血漿EPO濃度との検討では, それぞれとの間に統計学的に有意な相関関係は得られなかったが, 血液透析期間との間に正の相関が認められた (r=0.41). 慢性腎不全の原因疾患と血漿EPO濃度との検討では, 多嚢胞腎患者が他の原因によるものと比較して有意に高値であった (p<0.05).
以上のことより, 慢性腎不全患者の血漿EPO濃度は対照群と比較してむしろ高値であり, また原因疾患によっても異なることから, その貧血の治療に際しては, 血漿EPO濃度に基づいて治療方針を立てることが重要と思われた.