日本透析療法学会雑誌
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慢性腎不全における自律神経機能異常について
宮島 真之豊島 良一豊島 裕子松井 和隆長谷川 節川口 良人下條 貞友宮原 正
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1989 年 22 巻 11 号 p. 1219-1223

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抄録
指尖容積脈波のデジタル処理解析による交感・副交感神経機能検査法を用いて慢性腎不全患者の自律神経機能を検討した. 対象は慢性腎炎 (62例), 嚢胞腎 (3例), 腎盂腎炎 (2例), 痛風腎 (1例) 由来の慢性腎不全68例 (非透析群17例, 血液透析群30例, CAPD群18例, 腎移植群3例) で, 糖尿病, SLE等の全身性疾患による腎不全例は除外した. 指尖容積脈波は安静臥位で非シャント側, 第2指より2分間連続記録, デジタル処理解析し, 脈波波高変動係数 (CVWH), 脈拍間隔変動係数 (CVPP) を算出した.
CVWH, CVPPはそれぞれ腎不全群7.44±3.58, 2.41±0.94, 非透析群7.92±3.68, 2.88±0.94, 血液透析群7.57±4.04, 2.29±0.76, CAPD群6.69±2.96, 1.96±0.83, 腎移植群8.20±1.92, 3.70±1.32であった. CVWHは健常群に比して腎不全各群で有意の低下を示し, CVPPは非透析群では健常群との間に有意差はないものの低値を示す例が多く認められた. 透析群では明らかに有意の低下を示した. また, 透析法別にみた群間比較に有意差を認めなかった. CVWHとCVPPの関係を見ると腎不全例, 透析例で有意の相関を認めた.
以上より, 今回検討した慢性腎不全例のCVWH, CVPPは共に低下し, 交感・副交感神経機能に障害を認めた. 非透析群間に差を認めなかったことから, 腎不全で認められる自律神経障害は透析療法では改善困難であると考えられた. また, 腎不全群と透析群のCVWHとCVPPとに相関が認められたことより交感・副交感神経が同時に障害されることが推察された.
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© 社団法人 日本透析医学会
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