日本透析療法学会雑誌
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維持腹膜透析患者に認められた葉酸欠乏性汎血球減少症
桑原 隆戸田 常紀松尾 孝彦高橋 隆幸
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1989 年 22 巻 12 号 p. 1347-1350

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抄録

持続腹膜灌流 (PD) を受けている患者に認められた, 葉酸欠乏性汎血球減少症を報告する。患者は60歳の男性, 脳血栓, 慢性腎不全にて入院。シャントトラブルのため血液透析が施行出来ず, PDを行った。8か月後, 経口摂取をしなくなったため, 非経口的に栄養補給 (ビタミンB 12と葉酸は含まない) を行った。約7か月後に感染症に伴った急激な白血球 (2200/mm3), 血小板 (12000/mm3) 減少を来した。経過を通じて, 正球性正色素性貧血であり, 末梢血中にmacrocyteを認めなかったが, 血清葉酸値が2.8ng/mlと低く, 骨髄穿刺標本で著明なmegaloblast変化を認めたため葉酸欠乏症と考え30mg/日の葉酸を静脈投与した。血小板, 白血球数は投与後2週間以内に正常化した。尿毒症患者で汎血球減少症を認めた時, 常に葉酸欠乏症を考慮する必要があり, 感染症の併発は臨床所見を修飾する。葉酸の予防的投与が必要であろう。

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