日本透析療法学会雑誌
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二次性上皮小体機能亢進症に対する上皮小体摘除術の遠隔成績 -術後上皮小体機能低下症と, アルミニウム骨症発症の関係について-
藤田 省吾山下 賀正菅 英育中島 一朗林 武利中川 芳彦唐仁原 全河合 達郎本田 宏淵之上 昌平高橋 公太寺岡 慧東間 紘阿岸 鉄三太田 和夫
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1989 年 22 巻 12 号 p. 1357-1364

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抄録

二次性上皮小体機能亢進症に対して, 上皮小体摘除術 (PTX) が有効である場合が多いが, 短期間で骨関節痛が再燃する症例も少なくない. そこで, 1980年より1985年までの6年間にPTXが施行され, 長期間経過観察した68例を対象に, PTXの遠隔成績を検討した.
PTX直後に骨関節症状が悪化した症例は6例 (8.8%) で, PTX直後は一時的に改善したが1年以内に再び悪化した8例を加えると, 14例 (20.6%) であった. また, PTX後1年以上経過してから, 骨関節症状が再燃した症例まで加えると, 32例 (47.1%) に達した. PTX後1年6か月-6年3か月 (平均3年2か月) の時点で, C-PTH 1.2ng/ml以下の症例が30例, 2.4-6.15ng/mlが29例, 9.2ng/ml以上が9例であった. それらを便宜的に, Hypo群, Normal群, Hyper群とした. PTX後1年以内に骨関節症状が悪化した14例の内訳は, Hypo群9例, Normal群5例であったが, このうち13例は, Desferrioxamine (DFO) 誘発試験陽性であったため, DFOによるアルミニウム除去療法を施行した. Normal群5例のC-PTH値は, DFO投与前はいずれも低値であったが, DFO投与後に漸増した. すなわち1年以内に悪化した14例中13例はアルミニウム骨症の可能性が強く, しかも, 骨関節痛が再燃した時のC-PTH値は低値であったことになる. 一方, PTX後1年以降に骨関節症状が悪化した18例のうち2例は明らかな再発例であったが, 他の症例は, アミロイド沈着症である可能性が強い.
Hypo群では, PTX後の骨関節症状改善率が, 1年で70%, 3年で53%と, 他の二群より低く, PTX後早期に, アルミニウム骨症を発症しやすい傾向がみられた. したがって, 二次性上皮小体機能亢進症に対する上皮小体摘除術では, 永久的上皮小体機能低下症を作らないことが肝要であり, また, 術後, 上皮小体機能が回復するまでの間は, アルミニウム製剤の投与を避けるべきと考える.

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