日本透析療法学会雑誌
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糖尿病透析患者の視力障害の背景並びに対策
渡辺 有三山崎 親雄伊藤 恭彦原 相俊玉井 宏史吉田 太尾崎 郁夫深津 敦司松尾 清一伊藤 晃坂本 信夫
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1989 年 22 巻 12 号 p. 1379-1386

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抄録

糖尿病性腎不全症 (DM-CRF) が透析患者導入例の中で占める割合は近年増加している. DM-CRFにおける問題の一つはその視力障害であり, 視力障害の存在は社会復帰不能・退院不能等につながっている. 今回我々はDM-CRFの臨床的背景並びに視力障害の実態について検討した. その結果, DM-CRFはその臨床像において多様性を有しており, 保存療法期間中に尿蛋白量が少ない, 腎機能低下速度が緩やか, 視力障害が軽度, インスリン療法不要, 高齢等の因子は糖尿病性腎症というより, 腎硬化症によるものと考えられた. 視力障害は約半数の患者で高度に認められ, 社会復帰を妨げていた. しかし, 透析療法そのものは視力障害の悪化に関与せず, かえって透析療法導入後糖尿病性網膜症はその進展が阻止された. 進展阻止には高血圧・全身浮腫・糖尿病状態の改善等の関与が考えられ, 視力障害の予防として早期に透析療法に導入することが望ましいと考えられた.

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© 社団法人 日本透析医学会
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