抄録
血液透析患者において新しい腫瘍マーカーであるCA 50を測定し他のマーカーと比較検討をした. 臨床的に癌のない透析患者をグループ1 (95名, 平均年齢57.4歳, 平均透析期間5.3年) とし, 癌を有する, または癌の既往のある透析患者8名をグループ2とした. 健常な成人男女100名をコントロール群とした. 各群について腫瘍マーカーCA 50, CA 19-9, CEA, α-fetoprotein (AFP) を測定した. グループ1においてCA 50は13.7% (13例) の患者に陽性を示し, 同様にCA 19-9は20.0%, CEAは35.8%, AFPは0%の陽性率を示した. CA 50は膵および胆道系腫瘍のマーカーとして知られているが, 近年, 透析患者の剖検組織から膵炎を含む組織変化を呈する例が多いと報告されている. 透析患者では何らかの膵病変が高率に存在していることが考えられるので, 腫瘍マーカーとしてCA 50値を判定するうえで, このことを十分考慮すべきである.