日本透析療法学会雑誌
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透析患者の合併症と微量元素に関する臨床的研究
細川 進一大山口 渥吉田 修
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1990 年 23 巻 4 号 p. 371-375

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抄録
長期透析患者の合併症と微量元素の異常との関連を検討し, 合併症の予防と治療に役立てようとした.
100例の長期血液透析患者で合併症のない患者の血清中のAl, Si, Zn, Mn, Ni値と神経障害, 骨障害, 貧血, 低栄養状態の合併症を有する透析患者のそれらの値との関連について検討した.
合併症のない透析患者100例の血清Al値は8.6±1.1μg/dl (正常値: 0.7μg/dl以下) と高値であった. 同じくSi値も64±12μg/dl (正常値: 20μg/dl以下) と高値であった. Znは68±15μg/dl (正常値: 102±18μg/dl), Mnは0.2±0.1μg/dl (正常値: 0.6±0.2μg/dl), Niは0.2±0.1μg/dl (正常値: 0.5±0.1μg/dl) と低値であった. 神経障害を有する15例のAl, Si値は12±2, 86±15μg/dlで異常高値を, 骨障害を有する15例のAl, Si値も12±5μg/dl, 76±18μg/dlと高値であった. RBC, Hb, Ht値とAl, Si値は負の相関を, Zn, Mn, Ni値とは正の相関を示した. 栄養状態を示すTPおよびAlbとZn, Ni, Mn値は正の有意な相関を認めた.
透析患者の高Al, 高Si血症は神経障害, 骨障害および貧血の原因の一つとなり得る. 低Zn, 低Mn, 低Ni血症は透析患者の貧血ならびに低栄養状態を起こす原因の一つであることが示唆された. Al, Si, Mn, Ni, Znの異常を是正することが合併症の予防に有効であると考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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