日本透析療法学会雑誌
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透析患者に多発する後天性腎嚢胞の発生メカニズム
実験的研究
小野 慶治王 幸則
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1990 年 23 巻 6 号 p. 595-601

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抄録

長期透析患者に多発する後天性腎嚢胞の発生メカニズムは解明されていないが, 臨床上の観察から蓚酸カルシウム (OxCa) の尿細管内沈着によって尿細管内圧を上昇させ嚢胞が形成されるのではないかと疑い, 5/6腎摘および正常ラットで実験的に検討した.
まず, 蓚酸 (Ox) の前駆物質であるビタミンC (VC) を大量に与えた5/6腎摘ラットでは投与開始11か月後にしかOxCaの尿細管内沈着は認められず, すでにこの時点では5/6腎摘による急激な腎実質の減少に起因するrenotropic growth factorの放出によって, VC投与の有無にかかわりなく尿細管の拡張が認められOxCaの沈着と後天性腎嚢胞形成との関連性は証明出来なかった.
そこで, 5/6腎摘ラットに直接蓚酸ナトリウム (OxNa) を与えると, 非投与の5/6腎摘ラットよりも早期にしかも強い尿細管の拡張がみられた.
さらに正常ラットにOxNaを投与すると7日目にはOxCaが尿細管内に沈着し, 腎機能低下はないのに尿細管の拡張が起こり, これらの変化は経時的に強くなっていった.
以上の結果から, 末期腎不全患者に好発する後天性腎嚢胞の発生メカニズムの一つとしてOxCaの尿細管内沈着が関与していることが実験的に証明されたと考えられる.

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