日本透析療法学会雑誌
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酢酸セルロース膜の低分子蛋白除去特性と生体適合性に関する臨床的研究
脇田 邦彦鷹橋 浩見田 登宮崎 滋
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1990 年 23 巻 6 号 p. 609-615

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抄録

β2-microglobulin (β2-MG) 除去において拡散による寄与が大きいと考えられる酢酸セルロース膜 (cellulose triacetate (CTA膜) 1.1m2) を用いてisovolemic条件下で4時間の血液透析 (HD) を施行し, 拡散単独によるβ2-MGの除去能と各マーカー物質のsieving coefficient (SC) の測定, 生体の炎症反応のparameterであるacute phase reactant (APR) の動向, および生体適合性について検討した.
その結果β2-MGの減少率は平均で39.7%であり, 各マーカー物質のSCはβ2-MG 0.607, myoglobin 0.476, α1-antitrypsin 0.005, albumin 0.003であった. また, CTA膜と血液が接触することによる生体の反応を調べるために, CRPをはじめ, 各APRの変動を測定したが, 透析開始から48時間までの各時間相において有意な変動は認められず, また各生体適合性parameterに関しても安定した結果が得られた. さらに至適血液浄化法を選択する目的で, 3.0kgおよび8.0kgのconvectionを加えたHDを行い比較検討した結果, β2-MG減少率において, 両者間に有意差を認めず, convection 3.0kg-HDで平均57.5%の減少率を認めた. したがって通常の体重増加を示す症例のHDによる治療効果が期待され, 吸着, 濾過と並びβ2-MG除去の有用な-方法であると考えられた.

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© 社団法人 日本透析医学会
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