日本透析療法学会雑誌
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血液透析導入期患者の透析適応への援助
増山 三津子山口 千秋江守 外志子野寺 雅美北川 ひろみ高野 利明
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1991 年 24 巻 1 号 p. 55-59

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抄録
透析医療がめざましい進歩を遂げる中で, 透析患者の抱える精神的負担は大きい. 血液透析 (透析) 導入期患者は, これからの人生の中に透析を組み入れた生活を余儀なくされている. そこで私達は, 導入期における透析受容の良否は, その後の透析生活への適応を左右する重要な因子と推察し, 円滑な透析導入と, その後のquality of lifeを高めるための援助について検討した. 対象は, 昭和62年より2年間に当院で透析を導入し, 入院時と退院時に以下に述べる心理テストを検索しえた18名である. 方法は, 心理テスト (社会適応性尺度, 透析患者用文章完成テスト, 顕在性不安検査) を分析した. これらから受容度と不安度の入院時から退院時への変化, 受容度と適応能力, 家族関係, 自己管理の良否について比較検討した. 退院時に透析に対して受容的であるが不安の強い5名をI群, 受容的でしかも不安の弱い6名をII群, 逃避的で不安の弱い7名をIII群と分類した. II群においては入院時よりすでに受容的段階にある2名をII-a群, 退院時に受容的段階へと変化した4名をII-b群とした. これらをFinkの危機モデルを用い評価してみると, I群は承認の段階, II-a群は適応の段階, II-b群は退行から承認の段階への移行期, III群は防御的退行の段階と評価できた, しかもこれらの各段階は適応に至る一連の現象であり, III群からII-b群, そしてI群, さらにII-a群へと移行する一つの流れが考えられた. また受容的な例は, 適応能力, 家族関係, 自己管理とも良好な傾向にあり, 逃避的な例は, 3者とも不良傾向にあった. 以上より, 透析導入期には, 危機の各段階に応じた援助を行うこと, さらに透析への適応能力のほか家族関係をも考慮した透析受容への援助が重要である. その際, 中立的態度による対応で, 患者自らが透析を受容し, 適応していけるよう働きかけることが必要と考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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