日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
透析患者における凝血学的分子マーカーの検討 -特にエリスロポエチン使用後の変化について-
柴田 哲雄小田 東太住江 昭啓石井 孝典友 雅司金子 啓二那須 勝曲 泰男福島 克彦
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 24 巻 11 号 p. 1471-1476

詳細
抄録
血液透析患者の血液凝固・線溶の異常を明らかにする目的で, 新しく開発された凝血学的分子マーカーを用いて検討した. またエリスロポエチン投与後に貧血の改善した患者についても凝固・線溶動態を検討した.
対象は34例の安定期にある慢性血液透析患者, 男性17例, 女性17例で, 平均年齢61.1歳, 平均透析期間4年5か月であった. α2-プラスミンインヒビター・プラスミンコンプレックス (PIC), FDP-E, FDP D-dimerは透析患者は健常者に比し有意に高値を示し, 線溶の亢進が示唆された. トロンビン・アンチトロンビンIII複合体 (TAT), 可溶性フィブリンモノマー複合体 (SFMC) は透析患者で有意に高値を示し凝固の亢進が示唆された. また, エリスロポエチン約3か月投与後に貧血の改善した患者18例 (男性7例, 女性11例, 平均年齢62.2歳, 平均透析期間3年11か月) についてPIC, TAT, SFMCを測定したところ, 3者のいずれも投与前に比し投与後で有意に高値を示した. 以上の結果より, 安定期の透析患者では凝固・線溶の異常がみられ, エリスロポエチン投与後貧血が改善すると, さらに凝固・線溶の異常が強調されることが示唆された.
著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top