抄録
CAPDにおける難治性腹膜炎の経過中に肝被膜下血腫を合併し, これを切除した1症例を報告する. 症例は24歳, 男子, CAPD導入後約4年を経て, 1987年2月26日腹膜炎を合併し入院となった. 起炎菌はEnterobacter cloacaeであったが, 間欠的腹膜透析の併用による各種抗菌剤の投与によっても改善せず敗血症を併発するに至り, CAPDを断念し第20病日テンコフカテーテルを抜去した. その後施行したCTにおいて肝右葉に膿瘍を疑う低吸収域を認め, 開腹術を行った. 術中所見では肝右葉前区域の9×8cmの被膜下血腫であり, これを被膜ごと除去した. 内容物の培養検査はすべて陰性で, 病理組織学的には大半が肉芽組織からなる血腫と診断された. 術後の経過は順調であり, CT上も血腫の消失を確認し, 第87病日に退院となった.