糖尿病性腎症 (DM: 10名) および非糖尿病性腎症 (non-DM: 10名) 血液透析患者を対象として, 血漿α-ANP濃度の経時的変化 (透析前, 2時間, 終了時) と, 体重変化率, 血圧変化をDM群と非DM群にて比較検討した. なお, 各種ホルモン (レニン, カテコールアミン, アンジオテンシンII, アルドステロン) の同時測定も行った.
心胸比および体重増加率の増大に伴い, ANP値は高値を示す傾向が見られた. DM群, non-DM群の経時的ANP値は各々215±42, 158±21 (前), 117±20, 103±41 (2時間), 146±48, 85±6pg/m
l (終了時) とDM群で常に高かった. Non-DM群の2時間および透析終了時の体重変化率とANP変化率は-2.1, -26% (2時間), -4.02, -40% (終了時) に対し, DM群では-2.1, -42% (2時間), -4.03, -41% (終了時) とDM群の2時間時のANP変化率は, 体重変化率がnon-DM群と同じにもかかわらず大きかった. DM群のANP値は血圧変動に伴い大きく変化する傾向が見られたが, non-DM群では, その傾向は見られなかった. なお, ANP値および変化率と各種ホルモン値の間には, 両群とも相関関係は見られなかった.
以上よりDM群のANP値は, non-DM群に比較し, 体液量変化および血圧変動に伴い大きく変化する一方, 透析中の体重変化率に対するANP変化率がnon-DM群に比べ大きい傾向が見られたことは, 代謝障害および潜在性心機能障害を有するDM患者のANP濃度が体液量変化のみばかりではなく他因子により影響される可能性が示唆された.
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