日本透析療法学会雑誌
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長期血液透析患者における後天性腎嚢胞形成の検討
今井 恵子関野 宏鈴木 富夫上田 仁藤倉 良裕渡辺 直江野月 満寺沢 良夫今井 潤折笠 精一
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1991 年 24 巻 5 号 p. 631-640

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抄録
長期透析患者の後天性嚢胞腎 (ACDK) は, 腎腫瘍発生との関連で多くの検討がなされてきた. しかし, その発生, 進展に関わる因子には不明な点が多い. そこで, 慢性腎不全患者595人 (男性360人, 女性235人) の超音波断層検査によりACDKの発生, 進展とその背景につき検討した. ACDKは嚢胞の数によりGrade I (≦5個), Grade II (5< <10個), Grade III (≧10個) と分類し, 同時に腎容積の指標として, 腎長径を計測した. ACDKは透析年数の長期化に伴い多数化し, Grade IIは透析3年以降に, Grade IIIは透析5年以降に認められた. 腎長径は透析4-6年までは短縮傾向を示し, 6年以降はGrade II, III ACDKが増加するに従い増大傾向を示した. 透析10年以上で, 男性の55.4%がGrade III ACDKであるのに対し, 女性ではGrade Iが70.5%を占め, Grade IIIは3.9%にすぎなかった. また糖尿病性腎症群 (DMNP) ではACDKの進展例は認められず, Grade III ACDKは長期透析の糸球体腎炎 (CGN) 群患者, 若年男性に多く認められ, これらの群ではCr, Ht, PTH値が高値を示した. ACDKの進展には透析年数の長期化と共に, Crに代表される蛋白代謝とそれを修飾する蛋白同化ホルモン (男性ホルモン) の関与が示唆された, Htの高値も蛋白同化ホルモンとの関係で説明されよう. 本研究の過程で10例の腎癌が発見され, Grade Oから1.9% (3/157), Grade I ACDKから0.65% (2/308), Grade III ACDKからは7.5% (5/67) とGrade III ACDKからの発生が著しかった. ACDKのGrade分類は長期透析患者の腎癌の早期発見等, 患者の予後に重要な役割を演ずるものと考えられる.
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© 社団法人 日本透析医学会
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