日本透析療法学会雑誌
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CAPD患者の貧血治療におけるエリスロポエチン (EPO) 皮下投与に関する検討
横田 真二増井 則昭入江 啓熊野 和雄酒井 糾
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1991 年 24 巻 5 号 p. 641-646

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抄録
CAPD患者へのEPO投与法は, 在宅医療の典型であるCAPDの利点を十分活かす意味でも, 自己投与のできる皮下注射 (SC) が最適投与経路と考えられる. EPOのSC後のpharmacokineticsおよびその臨床成績と安全性について検討した.
15名のCAPD患者 (男性11名, 女性4名, 平均年齢31.6歳) を対象とした. うち8名はIVからSCに変更した症例である. EPO投与は, 患者自身で大腿部にSCできるよう教育した. 投与量は週1回120U/kg BW (体重) で開始し, 希望Ht値 (30-35%) が得られるよう調整した. 全例6か月以上の経過観察を行った. なお血清EPO濃度はRIA法で測定した. 抗EPO抗体の出現の有無もチェックした. EPOはSC (120U/kg BW) 後13.7時間でピーク (Cmax=209mU/ml) に達した後, kel=0.029/h (血中半減期約23時間) で減少した. EPO週1回のSC自己投与による貧血改善効果は全例に認められた. 副作用として, 2名で高血圧増悪のため降圧剤の増量を要した. 他に皮膚掻痒感の出現した例が1名あったが, SC EPO投与を中止した症例はなかった. 13名で経口的あるいはIVによる鉄剤補充が必要であった. 自己注射手技に由来するトラブルは認めなかった. 6か月後も, 全例抗EPO抗体の出現はなかった. SC EPO投与法は, CAPD患者の貧血改善に有効であり, その安全性にも特に問題は認めなかった. 腎性貧血改善は, EPOのIVでもSCでも得られるが, 積極的社会復帰の実現を目指すCAPD患者においては, EPOの自己皮下注射が望ましい投与法であると考える.
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© 社団法人 日本透析医学会
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