抄録
rEPOによりヘモグロビン (Hb) 濃度が10g/dl以上に改善した長期透析患者8名に対し12週間運動療法を行い運動耐容能におよぼす効果を検討した. 運動療法はエルゴメータを使用し, 最大運動耐容能の80%より開始した. 運動時間は最初の3週間は10分, 以後は20分とした. 3週毎に負荷量を10ワットずつ増量した. 運動療法の前後で運動耐容能テストを行い, 経時的に血液ガス, 乳酸値, 呼気ガスなどを分析した. 運動療法前後でHb濃度の有意の変動は認められなかった. テスト中PaO2, PaCO2に有意の変動は認められなかった. 運動持続時間は13.2±1.8から15.8±1.2分へと有意に延長した (p<0.01) が, 最大酸素摂取量には有意の増加は認められず, 最大血中乳酸値が3.6±2.0から4.4±1.4mMへと有意に上昇した (p<0.05). rEPOにより貧血の改善した透析患者においては運動療法により運動耐容能は改善したが, 最大酸素摂取量の増加は認められず, 最大血中乳酸値の上昇を認めた. すなわち, 運動療法による運動耐容能の改善機序は好気的エネルギー代謝の改善によるのではなく, 嫌気的エネルギー代謝の発達によるものと思われた. 貧血改善による飛躍的酸素供給量の増加に比し, 摂取酸素量の増加は軽度にとどまり, 透析患者における末梢組織での好気的エネルギー代謝の障害が示唆された.