日本透析療法学会雑誌
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腎性貧血に対するrHuEPO投与時の無効および低反応例の検討 -特に低トランスフェリン飽和度例について-
大平 整爾阿部 憲司長山 誠中村 健児萩原 良治今 忠正
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1992 年 25 巻 11 号 p. 1205-1212

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抄録
rHuEPO 1,500U×3回/週で4週間さらに3,000U×3回/週で4週間の投与を行ってもHbの上昇が0.5g/dl以下の症例を低反応例とすると, 158例の慢性血液透析患者中に9例が存在した.
1例が頸腺結核, 1例が原発性肝癌であり残り7例 (7/9, 78%) は鉄欠乏を原因としていた. これら7例がrHuEPOに対して低反応と判定した時点での血清鉄 (Fe) は62±18μg/dl, 血清フエリチン (Frt) 58±22ng/ml, トランスフェリン飽和度 (%Tf) 32±8%であった. 鉄欠乏状態はFeレベルのみからは把握しがたく, Frtの変動が鋭敏な指標となる. Frt 50ng/ml未満は絶対的鉄欠乏状態と考えられrHuEPOに対して低反応となることから, このレベル前後では鉄剤の補充が必須となる. 一方, Frtが100ng/ml以上のかなり高値を示しても低反応例は存在するが, この場合には%Tfが30%未満であり, 機能的鉄欠乏状態と考えられる. %Tf 30%未満では同値とHtとが有意な正の相関をとることからも, 鉄剤補充の必要がある.
鉄剤の投与法はFrt 50ng/ml未満, %Tf 30%未満では静注投与が急務で, それぞれのレベルを100ng/ml, 40%以上に急速に飽和し, その後はこのレベルを維持しうるように各々の症例の特性を考慮して経口か静注投与かを選択する. Frt 50ng/ml以上100ng/ml未満の症例もこれに準じておく方が無難である.
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