抄録
維持透析患者4例に4種類のhigh performance membrane dialyzer (HPMD) をcross overで使用し, β2-microglobulin (β2-MG) より段階的に分子量の異なる低分子領域蛋白 (MW; 11,800-66,000) としてβ2-MG, Prolactin (PRL), α1-microglobulin (α1-MG), α1-acid glycoprotein (α1-AGP) と, Albumin (Alb) をマーカーに選び, 篩係数 (SC) と除去率を測定した. SCで透析膜単体の性能を, 除去率でダイアライザーとしての性能を評価し, 両者の関係より各種HPMDの持つ特徴について比較検討した. 検討したHPMDはCL-SS15W (SS), BK-1.6P (BK), FB-150U (FB), AM-FP-15 (FP) である.
その結果, SSはすべてのマーカーで比較的高いSCを示したのに対し, 除去率は他のHPMDに比較し低値であった. このことより, 膜の持つ溶質透過性能をダイアライザーとして十分に発揮できていないことが推察された. BKはすべてのマーカーで高い除去率を示したが, β2-MG, PRL, α1-MGのSCは低く, 吸着かあるいは他の方法での除去の可能性も考えられた. FBでは, β2-MG, PRLは効率よく除去されるがα1-MG以上の物質は抜けにくく, 分子量20,000-30,000の間にシャープな分画特性を持つものと思われた. FPはすべてのマーカーで使用透析器中最も高いSCを示したが, このSCより予想されるほどの除去率を示さず, 膜の持つ優れた溶質透過性能を十分に発揮できていないことが推察された.
以上のことより, HPMDは低分子領域蛋白の除去において各々特有の特性を持っている. また, 各種HPMDにおいて, これらの蛋白のSCと除去率は一定の関係にないことが明らかになった. 使用する際はその特性・特徴を十分把握したうえで透析方法や膜の選択を検討していく必要があると考える. 今回は単に分子量のみに着目し検討を行ったが, 各蛋白のmolecular formやchargeについても検討する必要を感じた. また, 各種膜でも荷電やgel layer formationの違い等あり, 今後これらの解明と低分子領域蛋白の除去性能を的確に表現できる新しい評価法の確立が必要である.