日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
透析患者における胃排出能の検討
伊藤 正典畠山 収一久慈 一英宮内 勉森 保人伊藤 利之北野 博嗣泊 康男紺井 一郎竹田 亮祐
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 25 巻 11 号 p. 1219-1224

詳細
抄録
維持血液透析患者を対象として, アイソトープ法による胃排出能 (GE) を測定し, 胃運動機能を評価し, さらに自律神経機能および消化管ホルモンとの関連を検討したので報告する.
当院における維持血液透析患者25例を対象として, 糖尿病性腎症に由来するDM群8例 (男5例, 女3例, 平均年齢51.4歳), 非DM群17例 (男9例, 女8例) の2群に分け以下の検討を行った. GEの検討では, 固形食としてオムレツ食, 液体食として市販流動食に, それぞれ99mTcスズコロイドを混合したものを用いた. 固形食は, 摂食後60分の胃内RI残存率 (GR), 液体食は, 胃内RI半減時間 (T1/2) をGEの指標とした. なお, 健常人6例を対照群として同様の検討を行った. 自律神経機能の評価は, 心電図R-R間隔変動係数 (CVR-R) を計測して, 正常健常人145例より求めた各年代別の平均値から, -1SD以下を自律神経障害 (AD) 群とした. また, 消化管ホルモンとして, 血清ガストリンおよび血漿モチリンを測定し, GEとの関連を検討した.
固形食GRは, DM群で平均72.0±11.3%と, 非DM群59.2±14.3%, 健常者群50.1±9.9%の2群に比べ有意に高値をとった. 一方, 液体食T1/2はDM群で平均162.3分, 非DM群で103.1分といずれも, 健常者群平均49.5分と比較して有意に高値を示した. なお, GRとT1/2の間には有意な負の相関関係が見られた. CVR-Rの結果から, DM群では全例がAD群に属し, GE遅延とADとの関連が示唆された. 非DM群でも43.8%がAD群に属したが, GEとの有意な関連は認められなかった. また, ガストリンおよびモチリンの血中レベルとGEとの間に有意な相関関係は見られなかった.
以上, DM群では固形食, 液体食ともに, GE遅延が認められ, その成因に自律神経障害の関与が示唆された. 一方, 非DM群でも液体食GEは遅延しており, 胃運動機能は障害されている可能性が示唆されたが, 自律神経障害以外の要因を検討する必要があると思われた.
著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top