日本透析療法学会雑誌
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糖尿病性腎症透析例の副甲状腺機能の検討
井上 聖士吾妻 真幸藤田 嘉一平林 俊明
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1992 年 25 巻 11 号 p. 1251-1255

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抄録
糖尿病性腎不全 (DM-HD) は糸球体腎炎由来の腎不全 (Non DM-HD) に比してPTHは一般的に低値で, 著しい二次性副甲状腺機能亢進症 (secondary hyperparathyroidism: 2°HPT) を呈することは少ない. そこで, 年齢, 性, 透析条件をmatchさせてDM-HDおよびNon DM-HD群の各30透析例についてPTHをはじめとする生化学的検査の比較を行い, かつ, PTH低値の原因を検索するために無Ca透析 (Ca free hemodialysis: HD) によるPTH分泌刺激試験を行い両群を比較した. Baseline levelの2群の比較では, DM-HD群は男性19例, 女性11例, Non DM-HD群は男性16例, 女性14例で, 平均年齢はDM群59.8歳, Non DM群54.6歳, 平均透析期間はそれぞれ12.6, 15.7か月であった. DM, Non DM-HD群の血清Ca, Pi濃度, Al-P活性に有意差は見られなかったが, C-PTH濃度 (EIKEN Kit) は1.7±1.5, 3.6±2.3 (SE) とDM-HD群が低値であった. 両群ともC-PTHと年齢, 透析期間との間に相関は見られなかったが, DM-HD群のC-PTHと血清Piの間に軽い正相関が (r=0.51, p<0.05), Non DM-HD群のC-PTHと血清Ca値に負の相関 (r=-0.59, p<0.05) が見られた.
Ca free HDを行ったDM-HD群5例, Non DM-HD群6例では, 透析開始時, 30分, 60分経過後の血清Ca, Pi濃度に差は見られず同様に下降しIntact-PTHは両群ともbasal levelから同濃度上昇したが, DM-HD群はNon DM-HD群に比して常に低レベルを維持した. 以上の成績から, DM-HDでは低Ca血症に対する副甲状腺の反応性は保たれており, basal levelのPTH分泌が抑制を受けているのは, 糖尿病状態における何らかの細胞膜異常によることが推定される.
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