抄録
腎同種移植後の内シャントの開存状態について臨床的検討を行った. 防衛医科大学校泌尿器科で腎同種移植を行った19名の患者を対象として, シャントが開存している患者を開存群, 閉塞した患者を閉塞群, 手術的に閉鎖した患者を手術群に分けた. シャントの開存率は3年で52.5%で, シャント造設時の年齢と性比をマッチングさせた慢性透析患者からなる対照群と比較して, 有意に低かった. シャントの閉塞に関係したと思われるエピソードとして, 頻回穿刺, 打撲, 下痢による脱水と圧迫, 血管炎が認められた. 閉塞群では, 他の2群と比較して移植時の年齢が高かったこと, 移植腎機能が良好であったこと, 移植前から血清総コレステロール値とトリグリセライド値が高いレベルにあったこと等が特徴的であった. なお, 末梢血ヘモグロビン値, ヘマトクリット値, 血小板数および血圧は, 開存群と閉塞群の間に有意差を認めなかった.