抄録
透析治療をした350例を対象に, 生涯透析治療を続けていくうえで, どのような生きがいをもって日常生活を送っているかを, 透析期間, 性格傾向, 年代別との観点から検討した. 透析期間と生きがいの関連では, 全期間を通じて家族28%, 次いで社会復帰13%をあげたものが多く, 具体的な生きがいを持たない症例は41%と最も多かった. 性格検査には, Y-G性格検査を用いたが, 同時にCMI健康調査も施行した. Y-G性格検査によるE型およびCMI健康調査によるIV領域 (神経症傾向を有する例) を示す症例では, 他の群に比較し家族, 社会復帰をあげる者は少なく, 反面健康をあげる者, 生きがいなしとする者が多かった. 年代との関連では, 男女による差異が認められたため, 男女2群に分けて検討した. 学齢期では, 男女とも半数以上が生きがいなしと答え, 成人前期の20代男性において社会復帰をあげるものが多く, 女性では趣味が多くあげられた. 30代では, 男女とも家族を生きがいとしているものが多く (男45%, 女27%) 生きがいなしは, それぞれ33%であった. 成人後期では, 40代は30代とほぼ同様であった. 50代は男女とも家族 (男28%, 女13%) を生きがいにしていることに変りはないが, 生きがいをもたない症例も男性は50%, 女性42%と高率であった. 老年期になると, 家族を生きがいとする症例は多いが (男23%, 女24%) 年代が高くなるに従い, 生きがいをなくしている症例も増加し, 60代男性で52%, 70代では男女ともに70%以上と高率で, 80代の2例はいづれも生きがいをもっていなかった.
これらの結果から, 生涯にわたる透析治療が必要な患者のquality of lifeを考えるとき, 有意義な生活を送るには, いかにケアプランを作成し援助していくかを, 検討する必要性があると考えられる.