抄録
通常のバルプロ酸普通製剤 (C-VPA) では痙攣発作を抑制できなかった1例を含む, 徐放性バルプロ酸ナトリウム (SR-VPA) が有効だった血液透析施行中の3症例について, 血中濃度の動態を知る目的で, 透析前, 透析中 (1, 2, 4時間), 透析後4時間の総VPA濃度 (T-VPA), 遊離型VPA濃度 (F-VPA), 遊離型分画 (FF) を測定し, C-VPAと比較検討した.
その結果, SR-VPAのFF値の変動は20.2±3.7%であり従来報告されているC-VPAのFF値と同様に高値を示した. FF値は, 透析開始後さらに上昇し終了とともに急激に低下したが, SR-VPAではT-VPAの透析中の変動幅が小さいため, 透析終了後のF-VPAはFF値の急激な低下にも拘わらず有効治療域を維持していた.
以上の結果から, SR-VPAは血液透析患者に対して, C-VPAの問題点であった透析後のF-VPAの低下を解消し, 透析後の痙攣発作の抑制に有効と考えられた.