抄録
透析腎には腎細胞癌を合併しやすいことから, 超音波診断やCTスキャンによる定期画像診断が行われているが, 発見された腎腫瘤について血管撮影により診断すべきか否かに関しては意見が異なり, また得られた所見や合併症などについてのまとまった報告はみられていない. 我々は横浜第一病院および7サテライトクリニックで透析中の600例に画像診断スクリーニングを行い, 14例の腎細胞癌を発見し, 腎摘除術を行った.
これらの症例中11例に血管撮影を行い, それぞれの例で強弱の差はあれ腫瘍血管像または腫瘍濃染像を認め, 腫痛診断および腎摘出術におけるmappingにあたって有用な情報が得られた. ただし, 同時に行われた選択的腎動脈撮影と大動脈撮影を比較すると, 大動脈撮影のみでは診断しえなかった例があったことから, 大動脈撮影のみに頼るべきではない.
萎縮腎や多発性嚢胞に発生したT1またはT2の腎細胞癌であっても熟練した撮影者が行えば安全にして有用な情報を得ることができ, ことに通常の造影CTスキャンでの造影効果がはっきりしない腫瘍で診断的価値が高い.