抄録
薬物治療に抵抗する狭心症を合併した維持血液透析中の12例 (男8, 女4例, 平均年齢は56.3歳) に対する経皮的冠動脈形成術 (PTCA) の治療成績について検討した. 合計27狭窄病変に対してPTCAを施行し, 22狭窄病変 (82%) の拡張に成功した. 不成功例は2例で, そのうちの1例は小脳出血により死亡したが, 他の11例では重篤な合併症は出現しなかった. 患者成功は12例中10例 (83%) で, 非透析例と同等の治療成績であった. 11例の平均追跡期間は2年5か月で, 狭心症が4例に再発し, 3例には再度PTCAを施行し, 全例成功した. 透析患者に対する冠動脈バイパス術はいまだにhigh riskとされていることから, 透析患者の難治性狭心症に対しては, 解剖学的に禁忌・不適応でない限り, PTCAが第一選択と考えられた.