2021 年 31 巻 1 号 p. 97-106
・少子高齢化が進む中,世代間の負担格差の存在と厳しい医療保険財政上の制約から,患者自己負担増の議論は今後も避けられない。さらに,新型コロナウイルス感染拡大の財政的な影響は,今後顕在化する。
・患者自己負担が増すと,診療報酬点数について国民・患者への説明責任がより強く問われる。患者視点からの診療報酬体系の見直しで,分かりやすさならびに納得性を高めることが重要となる。見直しが不十分だと,患者・家族からの苦情・問合せ等で,医療現場の業務負担が増えかねない。
・患者自己負担増を議論するだけでなく,治療の質を維持・向上しつつ患者自己負担増を軽減する施策を考える必要があり,「賢い選択/節約」の推進に向けた患者へのインセンティブの見直しが求められる。
・つまり,政治的に難しい判断が迫られる負担増に対する国民・患者からの理解を得るには,①「患者自己負担増」の議論のみならず,②「診療報酬体系の患者視点での分かりやすさ・納得性の向上」,③「『賢い選択/節約』の推進インセンティブとしての患者自己負担増の軽減」を加えた「三位一体」の改革が必要となる。
・上記②,③の具体的な改革の方向性としては,(1)「患者視点での同一サービス同一負担額(診療側の点数は維持)」,(2)「『賢い選択/節約』推進のための患者自己負担率の軽減と軽減幅の明示」,(3)「調整機能としての保険者の負担割合の柔軟化」,(4)「3割負担の柔軟化と患者個人単位での3割上限の維持」,(5)「診療報酬体系の簡素化」が挙げられる。