抄録
維持二重濾過血漿交換療法 (DFPP) にて心不全と貧血を7年間にわたり管理しえた原発性マクログロブリン血症の剖検例について病理学的所見を検討した. 症例は56歳の男性で原発性マクログロブリン血症のため多臓器不全を呈し, 顆粒球減少症により化学療法が困難であった. 7年間にわたり計181回のDFPPを施行したが, 心不全にて死亡した. 剖検の結果, 心臓は660gと肥大していたが, 心筋にIgM等の均一構造物質の沈着は認められず, 僧帽弁と大動脈弁の弁口径は増大していた. 主たる死因は心収縮能の低下と弁口径の拡大による心不全と考えられた.
心臓の前負荷が増大しかつ心筋虚血を伴う本例のような心不全を呈する原発性マクログロブリン血症例においては, IgMを選択的に除去するDFPPは有用な治療法であったと考えられる.