1994 年 27 巻 10 号 p. 1313-1318
新規透析導入患者32名 (男17, 女15), 維持透析患者118名 (男69, 女49), 健常人43名 (男22, 女21) の遊離型T4 (FT4) を平衡透析法に基づくラジオイムノアッセイキットで測定し, 従来の標識アナログT4を用いる方法と比較検討した. アナログ法では導入期32名中16名 (50%), 維持期118名中34名 (29%) が正常範囲に分布したが平衡透析法ではそれぞれ32名中29名 (91%), 118名中98名 (83%) が正常範囲に分布した. 平衡透析法ではFT4とアルブミン, TBG濃度との間に有意な関係は認めなかった. 平衡透析法とアナログ法の間にはr=0.636と正の相関関係を認めたが平衡透析法において高値に測定された. 橋本病による甲状腺機能低下症を合併した透析患者および透析患者に合併したヨード蓄積による-過性可逆性甲状腺機能低下症患者の臨床経過中のFT4濃度を検討したが平衡透析法はアナログ法に比し, TSHの分泌や病態を明瞭に反映した. 以上より, 平衡透析法による透析患者の血中FT4の測定は甲状腺機能の評価や臨床経過のモニタリングに有用と考えられた.