日本透析医学会雑誌
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透析患者に合併した肩甲下滑液包炎による正中神経麻痺の1例
高須 伸治藤井 正司畑村 東一笹原 恭一
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1994 年 27 巻 12 号 p. 1493-1496

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抄録

透析アミロイド症による骨関節障害の一つに滑膜アミロイドーシスがある. また滑膜と組織学的に同一の滑膜で裏打ちされた滑液包にもアミロイド沈着がみられ, 滑液包炎を惹起し滑液の貯留のため関節周囲の腫大をきたすことがある. 腸恥滑液包炎による大腿神経麻痺の報告は散見されるが, 肩甲下滑液包炎による正中神経麻痺の報告は我々が検索した範囲では見当たらない. 今回我々は, 慢性血液透析患者に出現した右手指のしびれに対し, 滑液包造影により正中神経麻痺を伴う肩甲下滑液包炎と診断した. その原因として, その滑液中にはカルシウム塩の結晶は証明されなかったが, X線上滑液包の石灰化を認め, 結晶性滑膜炎の可能性も示唆された. 治療においては, 滑液の穿刺排液にて減圧すると同時に, ステロイドの滑液包内注入と同時に, low doseステロイドの内服を継続した. これにより周囲の組織の圧迫症状が軽減され, 正中神経領域のしびれも消失したものと推察された.

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