日本透析医学会雑誌
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至適透析の指標に及ぼす尿素のリバウンド現象の影響
中村 英一生間 敬博豊田 高彰岡本 峰夫諫見 康弘藤井 正博中島 義文宮野 竜一
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1994 年 27 巻 2 号 p. 83-88

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抄録

透析終了後, 血中尿素濃度は急速に再上昇し, いわゆる, 尿素のリバウンド現象がみられる. 慢性維持透析患者23名を対象に計92回の血液透析を行い, リバウンドの時間経過, 原因, および, 至適透析の指標である標準化透析量 (Kt/V), 時間的に平均した血中尿素窒素濃度 (TACurea), 蛋白異化率 (pcr) の算出に及ぼす影響について検討した.
週3回, 4時間, 血流量200ml/minの通常透析においても, リバウンドがみられ, 尿素濃度は約30分後には平衡状態に達するものと思われた. 透析直後から30分までのリバウンド率は約16%にも達した.
透析後の急速な血中尿素濃度の再上昇は, pcrとは全く相関せず, 蛋白異化亢進によるよりも, むしろKt/Vと相関することより, 尿素濃度の細胞内・外液間の不均衡に依存すると思われた.
透析終了直後と30分後の血中尿素濃度を用いてKt/V, TACurea, pcrを比較すると, それぞれ, 約0.15 (15.6%) の過大, 2.0mg/dl (4.0%) の過小, 0.08g/kg/day (8.5%) の過大評価を認めた. 従って, リバウンドを考慮せずに, 透析終了直後の血中尿素濃度を用いて, Kt/V, TACurea, pcrを算出すると, これら至適透析の指標を誤って良い方向へ過大評価する危険性がある.

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© 社団法人 日本透析医学会
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