抄録
膠原病に対する血漿交換療法の導入理由 (適応), 有用性および血漿交換療法施行後の血清学的検査値の変化と臨床症状の改善度との相関性につき, 血漿交換療法を施行した膠原病患者19例 (RA 8例, MRA 3例, SLE 8例) を対象としてretrospectiveに検索し検討した. RAでは, 8例全例に二重膜濾過法 (DFPP) を, そのうちの4例は免疫吸着法 (IA) を併用した. MRAでは, 3例全例にDFPP, そのうちの2例は, IAを併用した. SLEでは, 8例中1例は全 (単純) 血漿交換法 (T. PE), 7例にDFPP, そのうち3例でIA, 1例でT. PEを併用した. 血漿交換療法が導入された理由 (適応) は, RA・MRAでは, 多発性関節痛および進行性腎障害, SLEでは, 進行性腎障害および神経系合併症 (意識障害) の改善を目的として行った. RA・MRAの全例で関節痛の軽減ないしは消失を認めた. この症状の改善が血中RAHA値の低下と相関したのは, 11例中5例 (45.6%) のみであった. 進行性腎障害を示すMRA 1例において腎機能の改善を認めた. SLEでは6例の腎障害合併例中5例 (83.3%) で腎機能改善に有効であった. さらに1例に脳症の改善に有効であった. 臨床症状の改善の程度と血中抗核抗体, 抗DNA抗体の減少率とは8例中6例 (75.0%) で相関した. 長期的予後については, RA・MRAでは定期的な血漿交換療法を必要としたが, SLEでは短期的血漿交換療法によりえられた症状の改善は長期継続した. また問題となる副作用は認めなかった. 今回の結果より膠原病患者の保存的治療抵抗性の疼痛緩和, 腎障害および脳症に対する血漿交換療法の有用性が示された.