日本透析医学会雑誌
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血液透析患者の脂質代謝に及ぼす非分画ヘパリンの病因的意義
低分子量ヘパリンとの比較検討
新倉 一彦
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1994 年 27 巻 5 号 p. 355-360

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抄録

血液透析患者の脂質代謝障害に対する非分画ヘパリン (OH) の病因的意義を明らかにする目的で, OHと低分子量ヘパリン (LMWH) の脂質代謝に及ぼす影響を比較検討した. 透析歴3年以上の安定期透析患者で, 試験前3か月間の空腹時の血清中性脂肪 (TG) の平均値が250mg/dl以上の患者17名を対象とした. これらの症例の透析用凝固薬を無作為にLMWH群9例, OH群8例に分け, 透析前空腹時の血清TG, 総コレステロール, HDLコレステロール, リポ蛋白分画, 遊離脂肪酸 (FFA), リン脂質, 過酸化脂質, リポプロテイン (a), リポプロテインリパーゼ (LPL) 活性を8か月間測定した. LMWH群では, パルナパリンナトリウムを透析開始時に単回投与し, OH群についてはヘパリンナトリウムを単回投与後, 持続注入した. 透析1時間当たりの投与量は, LMWH群で9.7±0.9IU/kg, OH群で14.3±3.0U/kgとLMWH群で有意に低値であった. LMWH群では投与後3か月からTGが投与前に比し有意に減少したが, OH群では8か月間TGの有意な変動はみられなかった. リポ蛋白分画では, HDLリポ蛋白分画はLMWH群で投与後4か月から開始時に比し有意に上昇し, HDLコレステロールにも上昇傾向が伺われた. 総コレステロール, FFA, リン脂質, 過酸化脂質, リポプロテイン (a), LPL活性は両群とも期間中有意な変動は示さなかったが, HDLコレステロール/総コレステロール比はLMWH群で増加傾向が認められた. 以上の成績からOHは透析患者の脂質代謝の一部に病因的作用を及ぼしている可能性が強く疑われ, LMWHで脂質代謝に改善傾向の認められる事実は, 血液透析用抗凝固薬としてのLMWHの利点と考えられた.

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