日本透析医学会雑誌
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維持透析患者に発生した胸腺癌の1例
高橋 真紀長宅 芳男槇野 博史熊谷 功熊谷 智代平田 教至寺岡 暉太田 善介
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1994 年 27 巻 6 号 p. 967-970

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抄録

維持透析導入半年後に胸腺癌を発症した非常に稀な1例を経験した. 患者は80歳男性で, 78歳時に胃癌の摘出術を施行された. 糖尿病の治療を17年間続けていたが, 腎機能が悪化したため1992年7月に血液透析へ導入した. 同年10月から前縦隔の腫瘤を認め悪性腫瘍を強く疑ったが, 患者と家族の希望により経過を観察していた. 食欲低下や咳嗽, 胸水の貯留などが出現したため, 1993年4月に当科へ入院したが入院第22日目に死亡した. Necropsyを施行したところ病理組織検査で胸腺癌と診断した. 我々が検索した限りでは, 透析導入後に胸腺癌が発生した報告はなく, わずかに胸腺癌の摘出後7か月目に悪性高血圧のため急激に腎機能が悪化し, 最終的に維持血液透析を施行された全身性進行性硬化症の1例が報告されているだけである. しかも, 本症例では透析導入2年前に胃癌の摘出術を受けており, 透析患者の悪性腫瘍の発生要因や発生時期を考えるうえで興味深い症例と思われたため報告した.

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