日本透析医学会雑誌
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女性慢性腎不全患者における高プロラクチン血症の分子多様性について
浜本 龍七郎福岡 秀興大林 誠一石田 俊彦高原 二郎
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1994 年 27 巻 8 号 p. 1173-1179

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抄録
女性慢性腎不全患者 (F-CRF) においては, しばしば高プロラクチン血症を惹起することが知られているが, 本研究においてはF-CRFにおける血清プロラクチン (PRL) の分子多様性の特性と高PRL血症を惹起した症例の臨床的特徴の関連を血液透析 (HD) 導入前後にて検討した. 対象はF-CRF 80名で, そのうち65名はHD患者である. PRL分画は, 血清をSDS単独処理したものおよび2-mercaptoethanol (β-ME) とSDS添加65℃ 15分間加熱処理したものをSDS-PAGEで泳動しWestern blottingにて各分画を比較した. 血清PRL値は80名中53名が高値を呈したが, 乳汁漏出例は少なかった. HD導入前および導入後は血清PRL値は, 血清クレアチニン (s-Cr) 値と正の相関が認められたが, HD歴には反比例して低下した. PRL分画は高分子 (53-140K daltons), 中間分子 (23.5-28Kd) よりなる分子多様性を示し, 高分子域の分画, 特にβ-ME resistant dimerが多かったが, HD前後ではそれらの分画は変化しなかった. これらのことからF-CRFでは, 高PRL血症にもかかわらず乳汁漏出が少ない理由として, PRL分画で高分子域の分画が多く中間分子域の分画が少ないことより, 乳汁漏出を誘起する分画は中間分子のうちのペプチド分画であることが推察された.
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© 社団法人 日本透析医学会
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