抄録
二次性副甲状腺機能亢進症患者より摘出した副甲状腺における, preproPTH, c-myc, オルニチン脱炭酸酵素遺伝子 (ODC) mRNAの発現をノーザンブロット法で調べ, 術前に投与した1,25(OH)2D3(D3) の影響を検討した. 3例11個の副甲状腺においてpreproPTHの発現は最小の発現量を1とした場合最大約2倍程度の多寡が見られたものの, 副甲状腺の大きさや組織型の多様性と相関した変化ではなかった. c-mycの発現は1例の4個の副甲状腺のうち2個で発現増大が認められた. しかしこれらの副甲状腺の大きさや組織型には際立った特徴はなく, その発現増大の原因は明らかではなかった. ODC mRNAの発現量はすべての副甲状腺においてほぼ一定であった. D3は4μgを4例に対して術前3.5-48時間に経口投与した. 摘出した13個の副甲状腺の遺伝子発現を検討した結果, preproPTH, c-myc, ODCいずれの発現も3例の非投与例と差が認められなかった. したがって副甲状腺摘出術の適応となるような二次性副甲状腺機能亢進症においては, D3 4μg投与では, これらの遺伝子発現は抑制されないものと考えられた.