抄録
症例は42歳女性, 平成5年4月下旬に下肢の紫斑に気付き某医受診, 血小板減少および意識障害の出現を認め5月上旬当院入院となった. 入院後, 動揺する精神神経症状, 血小板減少, 微小血管性溶血性貧血, LDH高値, より血栓性血小板減少性紫斑病と診断し抗血小板剤, 新鮮凍結血漿の輸注, ステロイドパルス療法を施行した. しかし精神神経症状は悪化し昏睡に陥ったため血漿交換療法を開始, 計23回の血漿交換により寛解を得た. 本症例では血漿交換 (PE), 血漿輸注 (PI) の効果を血小板数, LDH値の変化率を用い比較検討した. その結果, 血小板増加率, LDH減少率ともにPEが有意に優れていた. また経過中に血管内皮細胞障害の指標としてPGI2の代謝産物である6-keto-PGF1αを, またTTPの病態への関与が報告されているvon Willebrand factor antigen (vWF-Ag), vWF-multimer解析を経時的に測定し病態との関連を検討した. 6-keto-PGF1αは入院時と比べ, 寛解期に増加傾向を認めたが, ほぼ正常範囲内の推移にとどまった. vWF-Agは不変であり, vWF-multimer解析も正常パターンを示した.