日本透析医学会雑誌
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Campylobacter coliによるCAPD腹膜炎の1例
浅野 学小口 健一兼松 江巳子北島 和一河田 幸道松本 哲哉山口 恵三
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1995 年 28 巻 3 号 p. 301-305

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抄録

Campylobacter coliによるCAPD腹膜炎を経験した. 症例は55歳男性, CAPD歴は11年. 1993年10月8日に下腹部痛と下痢が出現し, 翌日にはCAPD排液の混濁を認めたため来院した. 排液中白血球数246個/μlであり, 腹膜炎の診断にて入院となった. 入院後, vancomycin 1,600mgを1回腹腔内投与した上, cefoperazone 1.0g/日の腹腔内投与を5日間行ったが効果なく, imipenem/cilastatin 1.0g/日の点滴静注に切り替えたところ, 第9病日以後には排液中白血球数は100個未満になった. 来院時排液培養の結果は, Campylobacter coliであった. さらにnorfloxacin 200mg/日の経口投与を続けていたが, 第31病日に再び排液の白濁を認めたためceftazidime 1.0g, fosfomycin 1.0g/日の腹腔内投与を行い第38病日に治癒に至った. 2回目の発症時も起炎菌は同一菌種であった. 薬剤感受性試験を参考にしてclarithromycin 400mg, ampicillin 750mg/日の2剤の投与を追加し, その後再発を認めていない. 血液, 胃液, および便の細菌学的検査では, いずれも陰性であり感染経路は不明であった.
CampylobacterによるCAPD腹膜炎の報告例は22例あるが, C. coliが同定されたのは2例目にあたり, 極めて珍しい症例と思われる. また, 今回, clarithromycinの腹膜透析液中の濃度についても検討を行ったので併せて報告する.

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