日本透析医学会雑誌
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多発性肝動脈瘤破裂により急性腹症を呈したSLE腎症慢性維持透析の1例
四家 敏秀宇都宮 保典菊池 隆秀織内 竜生浅尾 啓子小村 香與子今澤 俊之友成 治夫北原 光夫栗山 哲
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1995 年 28 巻 4 号 p. 377-381

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抄録
SLE腎症により慢性維持血液透析を施行している患者が急性腹症, ショックで来院した. 腹部超音波検査, 体部CT, 腹部動脈造影により多発性肝動脈瘤の破裂による急性腹症, ショックと診断されたが肝動脈塞栓術によって救命, 軽快し得た.
SLEの非特異的腹部症状は, 比較的多く認められるが急性腹症をきたすことは稀とされている. SLEの急性腹症の原因として腹膜炎, 腸管の血管炎による穿孔, イレウス, 急性膵炎, 肝脾臓破裂などが報告されている.
今回我々が経験した肝動脈瘤の破裂による急性腹症は, これまで報告されておらず, 極めて稀であり興味ある症例と思われた. 本症例ではその迅速診断において腹部超音波検査, 体部CTが有益であった. また, SLEの急性腹症の鑑別診断の一つとして肝動脈瘤破裂への留意が必要であると考えられた. 多発性肝動脈瘤がSLEと直接関連があるかどうかは不明であるが, 動脈瘤発生の素因としてSLEによる血管炎, 尿毒症, 高血圧等の関与が考えられた. また, SLEの急性腹症の鑑別診断の一つとして肝動脈瘤破裂への留意が必要であると考えられた.
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