日本透析医学会雑誌
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長期血液透析患者における頸椎のX線像; 重症度分類と透析膜の影響
金井 英俊平方 秀樹平方 恵理子長嶋 昭憲奥田 誠也藤見 惺内藤 正敏藤島 正敏
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1995 年 28 巻 6 号 p. 965-972

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抄録

糖尿病を除く慢性血液透析患者99例を対象に, 頸椎X線撮影を施行し, 椎体破壊像, 椎間腔狭小化の程度を4段階〔G0: 正常, G1: erosion (geode of the endplate), G2: 椎間腔に高度の狭小化, およびG3: 椎体は破壊し関節の可動性が消失〕に重症度分類した. G1-G3が49例 (49.5%) に認められ, G3は6例 (6.1%) であった. G3群の現年齢および透析開始時年齢は, 70±5 (SE) 歳, 61±5歳で, 他の3群に比べて有意に高齢であった (p<0.01). 頸椎X線像の重症度と透析期間, 血中β2ミクログロブリン濃度などの血液生化学的所見との関連は明らかでなかった. 頸部痛, 肩痛などの自覚症状を有する例の頻度は, 高度の変化を呈したG2群, G3群で有意に高率で (p<0.05), これらの頸椎変化は長期透析患者の頸椎病変の進行を示唆する所見と考えられた. G2群およびG3群では, 合成高分子膜の使用頻度が低く (p<0.05), 合成高分子膜使用群 (n=38) では, G3を呈する例はなかった. G1またはG2を呈する例は, 合成高分子膜使用群の方がクプロファン膜使用群と比較して, 透析期間が有意に長く (p<0.05), 導入時年齢, 現年齢には有意差はなかった. 以上の結果から, (1) 頸椎X線撮影は簡便で透析患者の頸椎病変のスクリーニング法として有用であること, (2) 合成高分子膜使用例では, 重症度の高い頸椎変化の発症頻度が低率で, 合成高分子膜は頸椎破壊性病変の進展を抑制する効果を有する可能性が示唆された.

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