抄録
腎性貧血症において, 体内の鉄欠乏量の評価は, rHuEPO療法での臨床的効果および至適投与量を知る上での最重要因子と思われる. 従来, 生体の貯蔵鉄量の指標として血清ferritin (S-Ft) 値が一般に用いられてきたが, 最近, 種々の血液疾患における, より有用かつ直接的な貯蔵鉄量のマーカーとして, 赤血球ferritin (RBC-Ft) の測定が注目されている.
そこで今回, 健常者16例と, 維持透析患者47例においてRBC-Ftを測定した結果, 患者群での平均値は25.0±16.6ag/cellであり, 健常者での平均値25.6±17.3ag/cellに比べて差は認められなかった. また, 患者群において, 血清鉄 (S-Fe) 値とS-Ft値およびRBC-Ft値との間に有意な相関はみられなかったものの, rHuEPO投与前後でのヘモグロビン増加量とRBC-Ftの変化量との間において, r=0.461, p<0.05と有意な正相関を認めた.
今回の結果より, RBC-Ftの測定はrHuEPO療法の最大の適応である維持透析患者での機能的貯蔵鉄量を把握する上で有用であることが示唆された.