抄録
リドカイン含有局所麻酔貼付 (テープ) 剤 (商品名; ペンレス®) の維持血液透析症例に対する有用性と至適使用方法に関する検討を行った. 維持血液透析症例17名 (男性14名, 女性3名) を対象とした. 内シャント穿刺時疼痛度はvisual analogue scale (VAS) を用い判定した. 本剤を使用せずにシャント穿刺をした場合と本剤を穿刺前に30分間, 60分間, 90分間貼付した場合での疼痛度を比較検討した. 本剤を使用しなかった場合, あるいは本剤を30分間, 60分間, 90分間貼付した場合のVASスコアはそれぞれ9.82±1.24, 4.57±0.72, 3.00±0.51, 2.69±0.48 (平均値±標準誤差) であった. 本剤を使用しなかった場合と30分間貼付した場合, 60分間貼付した場合, 90分間貼付した場合の間にはいずれも有意差を認めた (いずれもp<0.001). また, 30分間貼付した場合と90分間貼付した間にも有意差を認めた (p=0.015). しかし, 30分間貼付と60分間貼付の間, および60分間貼付と90分間貼付の間には有意差は認めなかった (p=0.051, p=0.329). 以上の結果により本剤は内シャント穿刺時の疼痛緩和に有用であることが判明した. 30分間貼付と60分間貼付の間には統計学的有意差は認めなかったものの疼痛スコアの低下傾向 (p=0.051) を認めており, 平均的には本剤の貼付時間は60分以上とするのが妥当と考える. しかし, 本剤の疼痛緩和効果は個人差が大きく, 一律的な至適投与方法の決定は困難である. 症例毎に各種貼付時間を試行し, 至適貼付時間を決定すべきと考える.