日本栄養・食糧学会誌
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総説
骨・血管組織等の代謝を制御しうる食品・栄養成分に関する研究
(令和3年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
田中 照佳
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2022 年 75 巻 2 号 p. 71-76

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抄録

腹部大動脈瘤は, 腹部大動脈の進行的な拡張を特徴とする疾患である。腹部大動脈瘤の詳細な発症メカニズムは不明であるため, 有効な治療薬の開発には至っていない。我々は, ヒトおよび腹部大動脈モデルマウスに破骨細胞が存在することを世界で初めて発見し, この破骨細胞が動脈瘤の発症に関与することを明らかにした。また, 高血糖は動脈瘤発症のネガティブリスクファクターであることが知られているが, 本研究ではその詳細な解析を明らかにした。糖尿病モデルマウスに動脈瘤形成を誘導化したところ, 高血糖によりマクロファージ活性化が抑制されたことにより, 動脈瘤形成は有意に抑制され, これらのメカニズムにLiver x receptorが関与することを明らかにした。さらに, 破骨細胞の分化を抑制するクズイソフラボンであるプエラリンを動脈瘤モデルマウスに投与すると動脈瘤形成は有意に抑制された。これらの知見により, 今後は破骨細胞を標的とした腹部大動脈瘤の治療のための臨床研究や食品・栄養成分による予防法の確立が期待される。

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© 2022 公益社団法人 日本栄養・食糧学会
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