日本透析医学会雑誌
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腎センターにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の汚染状況とその対策
岩谷 昌代田中 礼子七沢 啓子能島 淑子根塚 とよ子古湊 一司竹田 慎一高桜 英輔
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1996 年 29 巻 4 号 p. 291-296

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抄録
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) は, 院内感染の最も重要な原因菌の1つとなってきている. 今回, 私たちの腎センター内におけるMRSAの汚染状況を調査し, その対策について検討した. 透析患者109例中10例 (9.2%) の鼻前庭部よりMRSAが2回連続検出されたが, いずれも感染症を合併しておらず, 保菌者であった. 保菌者と非保菌者との間には, 性, 年齢, 透析歴および基礎疾患に関し差はみられなかったが, 保菌者では過去1年以内に入院歴を有する者, 長期間にわたって抗生物質を服用していた者, および日常生活上介助が必要な者が有意に多かった. また, 医療従事者20例の鼻腔培養は陰性であったが, 保菌者が使用したリネン, 床, ナースシューズおよび白衣からMRSAが検出された. そこで, 感染対策マニュアルを作成し, 保菌者の除菌および環境浄化に努めた. ポピドンヨードの使用により10例中6例 (60%) の保菌者ではMRSAが陰性となった. また, センター内から検出されたMRSAはすべて陰性となり, 新たな保菌者の出現はみられなかった. 以上より, MRSAによる院内感染を防止するためには, 入院患者に加え, 外来患者, 特に, MRSAを保菌する可能性が高い透析患者における対策が必要と考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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